1.安全衛生改善計画策定をご支援します
- 職場の危険防止の実が上がるようにするためには、企業・事業場の実態に合った安全管理システムを構築し、それを十分に機能させなければならない。
- そのためには、安全活動を計画的に進めることが重要であり、安全衛生改善計画はその目的のために作成するもので、その場合には次のようなことに留意する。なお、この安全衛生改善計画は、労働安全衛生マネジメントシステムにおけるPDCAのうち最初のPlan(計画)にあたる重要な事項である。
(1)間題点の把握
a)潜在する問題点の整理・分類
- 安全衛生改善計画の作成に当たって最初に行うべきことは、職場に潜在する問題点を把握することであり、そのためには安全点検などで把握した事項などを整理、分類し、計画の中の重点事項、細部事項などに反映させることである。
- 一般には、自らの事業場で発生した事故・災害の調査結果や災害統計を参考として問題点をまとめていることが多く、計画作成の場合の基本に沿っているといえるが、職場には事故・災害としては現れていない危険(有害)要因も多く潜在しているので、次のような資料を幅広く収集し、総合的な分析を行うことが重要である。
◇前年に発生した不休災害を含めた災害事例およびその調査分析結果
◇生産ライン、機械設備などのトラブル報告
◇ヒヤリ・ハット事例報告
◇安全点検(職場巡視・安全パトロールなど)の結果
◇安全委員会、安全協議会などの審議結果
◇労働基準監督官など行政機関の指摘事項
- 次に、これらの収集した資料について、過去に重度の傷害を伴ったもの、リスクアセスメントの結果リスクが大きいと判断されたもの、法令違反であるもの、多くの職場に同種の問題点があるものなどに分類し、優先順位をつける。
b)情報の収集
- 個々の事業場では、災害が発生する頻度が少なくなってきているため、自社の情報のみでは不十分であるので、それを補うために他からの情報の収集を行うことも必要である。
- 労働災害の全国的な傾向、新しい型の災害などの特徴的な事例と対策の方向などについては、関係行政機関から通達、ガイドラインのような形で、あるいは事例紹介の形でインターネットなどを通じて得ることが可能なので、それらを安全衛生改善計画作成の資料として活用することができる。
c)安全活動の評価
- 安全衛生改善計画は、立派に作成してもそれが実行されなければ絵に描いた餅になってしまうので、実施結果について必ず評価し、次の計画に反映させることが重要である。
- 評価の資料としては、前年(あるいは前年度)の実施結果、安全管理者の活動記録、各職場の活動記録、トップの巡視結果、本社の安全監査の結果などを活用する。
(2)経営トップの安全方針の明示
- 安全衛生改善計画の冒頭には、経営トップ自らの表明した安全の基本方針が掲げられていなければならない。
- この基本方針は、具体的に示すことが重要で、スローガン的に「労働災害を絶滅しよう」というようなもの、あるいは「一人ひとりが安全に気をつけよう」というような労働者に依存するようなものは適切でなく、事業の総責任者である経営トップが先頭に立って実行するとの自らのポリシーを明確にしたものであることが望ましい。
(3)基本計画と細部計画
- 基本計画としては、企業または事業場が定めた長期計画(3年計画、5年計画など)、本社が定めたその年の全社計画などがあるが、国が定めた労働災害防止計画(通常5か年計画)なども参考にするとよい。
- 細部計画は、本社の基本計画あるいは事業場の長期計画に基づいて、毎年の実施計画として作成するものであるが、事業場(工場)一本の場合と、さらに下位の部課別の実施計画などがある。
(4)計画の目標
- 安全衛生改善計画で重要な部分は、到達の目標を定めることであるが、「死亡・重大災害の絶滅」、「災害の度数率○○以下」などのように数値的な目標を掲げるものと「作業マニュアルの遵守と安全意識の定着」、「危険要因の完全除去」などの対策目標あるいは実施目標的に掲げるものが一般的であるが、できればこの両方を掲げるとより具体的になる。
(5)対策項目・実施方法
- 計画の到達目標が定まれば、次のステップとして目標を達成するために必要な対策の項目とその実施方法を具体的に定める必要がある。
- 対策項目を定め、その実施月を羅列した一覧表的な実施計画も少なくはないが、これだけでは不十分であり、細部計画では対策の実施主体、実施方法まで踏み込んで示すことが大切である。
2.安全衛生改善計画の例